2012 7月28日(土) 12:00〜 田村文利 Afternoon Jazz Live At The Royal Horse vol.22
「Livin' With The Miles Davis Quintet」 Miles Davis 第一期黄金クインテット時代のレパートリーから
メンバー:田村 文利 (pf) 山本久夫(bs) 渡邊愛子(dr)

 ジャズ界の帝王、Miles Davisは1926年5月26日イリノイ州アルトンに生まれ、イーストセントルイスで育ちました。父は歯科医、母は音楽の教師という裕福な環境で育ち、13歳の誕生日に父親からトランペットをプレゼントされ演奏を始め、18歳でビリー・エクスタイン楽団のDizzy Gillespie(tp) Charlie parker(As)との共演を果たし、その後Juliard音楽院に入学の為New Yorkに出ましたが、すぐに中退し、Parkerと行動を共にしました。Parkerのファースト・リーダー・レコーディングに若干19才で参加した後もParkerとの共演を続け、と同時にNew York周辺の進歩的なミュージシャン達と共に、演奏や意見交換を通してJazz界のど真ん中に身を置き、成長していく事になります。
 Milesの1st Leade albumは少し意外な事に、Gil Evans(P Arr)らとの共同作業による Big Band 作品『 The Birth Of The Cool』でした。
 当時の他のジャズミュージシャンと同じように、Milesも麻薬との闘いの中、50年代の初めは音楽活動にかなり制約を受けましたが、そこから抜け出した後はまさに怒濤の勢いでJazz界を先導していくことになり、Jazzの帝王として君臨して行きました。 少々乱暴な言い方をすれば、40年代半ばから'91年9月28日に亡くなるまでの『Milesの音楽を聞く事がそのまま、Jazzの歴史を知る事になる』ということではないでしょうか。

 今回のLiveではそのMilesの第一期黄金クインテット時代と言われる、John Coltrane(Ts) Red Garland(P)Paul Chambers(B) Philly Jones(Ds) との活動期間に作ったアルバムの数々の中からプログラムを作りたいと思います。
 そんなMilesのHistoryを話し続けると、果てしなくなってしまうのですが、今回このクインテット時代のことは少し語りたいと思います。'51年から始まったPrestige RecordsにおけるMilesのレコーディングでしたが、'55年に結成した第一期クインテットの演奏を聞いたCBS RecordsはMilesに専属契約をせまります。
 Milesにとっては、不遇時代からお世話になったPrestigeですが、常に上昇志向の高い彼なんで、Jazz専門のマイナーレーベルから、あっさりと大手のCBSに移籍します。 '55年10月からCBSのスタジオで秘密裏の うちにAlbum『'Round About Midnight』のRecordingを始めていました。Prestigeでのクインテット作品は'55年11月録音の『The New Miles Davis Quintet』でした。CBSへの移籍の前に、LP4毎分を作る契 約が残っていた彼等は、俗に「マラソン・セッション」と呼ばれる二日間('56 5/11 10/26)で24曲を録音しました。それらの曲は『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』という4枚のアルバムに収められています。
 '57年にはGil Evans と、10年ぶりのBig Bandアルバム『Miles Ahead』を作りました。またフランスでは映画『死刑台のエレベーター』のサントラを録音したり、'58年にはCannonball Adderley(As)をバンドに加え三管編成になり、本格的にモード・ジャズの時代に突入します。その辺の歴史的な事実についても、今回のライヴの中で、お話しして行きますっ。この後のMiles の足取りについてはまたの機会に譲りますが、この後のメンバー 変遷、音楽的方向の行方は、我々ジャズファンにとっては、誠に興味深いトピックですが、またの機会に譲らなければいけませんっ。

1部

1.The Surrey With The Fringe On Top
 ミュージカル"Oklahoma"の為に、Richard Rodgers(曲)と Oscar Hammerstein 「(詩)が書いたこの曲を、 Miles Quintetは'56 5月11日のマラソンセッションの中で録音しました。4部作『Steamin'』アルバムのA面一曲目です。

2.Airegin
 Sonny Rollins(Ts) が 1954に書いたこの曲はMilers DavisはRollins を含むバンドで、アルバ ム『 Bag's Groove』の中で録音しました。今回我々が演奏するのは、アルバム『 Cookin'』でMilesがレギュラ-バンドと 演奏した、ヴァージョンのアレンジで演ろうと思います。このアレンジの面白さは、ライヴのMCで解説したいと思います。

3.Half Nelson
 このMilesのオリジナル曲は、Be- Bop期に活躍したピアニスト、アレンジャーの Tadd Damelonの作曲した「 Lady Bird」のコード進行に基づいてできています。Be- Bopの時代には、このようなことよくありました。主には著作権費を払いたくないという理由で、ジャズ専門の弱小レコードレーベルがよくとった苦肉の策ですが、しかし、この曲においては、その理由というより、先輩ミュージシャンン、T Damelon に対するMilesの尊敬をこめたオマージュと僕は思いたいです。こちらは'40年代後半のParker とのレコーディングでも演奏されていましたが、クインテットでの演奏は『Workin'』に収録されていました。

4.Lament
 今回の特集は、Miles 第一期クインテットのレパートリーからの選曲ですが、僕がMilesの全アルバムの中の好きなBest 3の一つである『Miles Ahead』からもやはり一曲は演奏したかったので、この曲を選びました。Gil Evansの素晴らしいアレンジでは今回お聴かせできませんが、この美しいJ.J.Johnson(Tb)のオリジナルをPiano Trioでストレートにお送りしたいと思います。

5.Billy Boy
 古くからアメリカに伝わるTraditionalSong(民謡)のひとつですが、ジャズ界では、小粋な演奏をする時のVehicle として使われます。アルバム『Milestones』の中ではRed GarlandをフューチャーしたPiano Triodeで演奏されていました。

2部

1.I Could Write A Book
 '40年のミュージカル"Pal Joey"の為にRichard Rodgers Lorentz Hartのコ ンビが書いたこの曲は、MilesにぴったりのMed Swingのジャズ曲として料理されました。『Relaxin'』より。

2.Woody'n You
 Milesの先輩トランぺッターDizzy Gillespieの作品で、クインテットの録音は 『Relaxin'』にありますが、Be-Bopだけでなく、ラテン音楽に多大なる貢献をもたらしたDizzyだけに、多くのLatin Jazz Versionのカバーがあります。今回この曲だけはMiles Quintetの演奏とは違うアプローチ――Latinのリズムでやってみたいと思います。

3.In Your Own Sweet Way
 進歩的な音楽性で知られる、白人ジャズピアニスト、Dave Brubeck作曲のこの曲は、Lyrical(叙情的)なMilesのTpにあまりにもピッタリです。『Workin'』に収録されていますが、彼は『Collector's Item』('56年3月録音)で、黄金クインテット結成以前のバンドでも演奏していました。
 Jazz Trivia・Interludeで使われていた、 A♭ Pedal上での E♭Minor Line Clicheのアイディアは後にJ Coltraneの「 Body&Soul」のアレンジにも転用されています.(専門用語の羅列を、たまにはお許しください)

4.Tune Up ~ When I Fall In Love
 Milesのオリジナル('53年の『Blue Haze』で初録音)のこの曲はジャズの伝統である一音ずつ転調して行くコード進行でできています。
 続いてMiles好みのStandrd Balld Tuneもお送りします。それぞれ、『Cookin'』『Steamin'』より。

5.If I Were A Bell
 '50年のミュージカル『Guys and Dolls』の為に Frank Loesser作曲したこの曲も、 Milesの超愛奏曲でした。 初演は『Relaxin'』のA面一曲目でした。

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